小学館,2006

久しぶりに小説を読んでみた。

小説といえば、何かが起こって、そこにいる人の心情が描写されて…というもので、個人的には読むのが苦手だと思っていた。

しかし、この本は文章の表現がとても素敵で面白い。一味違っている。

恋愛小説で、主人公の中学生〜高校生の出来事が綴られている。

大筋としては、付き合っていた恋人が病気で亡くなり、残された主人公はそれをどう受け止めて前へ進んでいくかという葛藤が描かれている。

この小説の特徴は、

出来事が時系列に描かれていないという点だ。

失われた過去の時間と、現在とが交互に登場する。

今と失われた過去をその都度対比させられることになる。

この対比で、ある時間がその一寸先には失われているかもしれないものだという切迫感のようなものを感じる。

恋人と学校の帰り道に神社で過ごしたり、近くの無人島で遊んだりと、日常が描かれている。

しかし、恋人は病気になり、次第に正気を失っていく。

恋人に頼まれて病院から連れ出し、オーストラリアへ旅行に出かけようとしたこともあった。

そして最愛の相手がいなくなった後、主人公は感情を持てなくなるほど苦しむ。

時系列ではこうだが、実際には今と過去のストーリーが交互に登場し、今という時間・状況がこの先もずっと続いているという感覚を、失わせる。

(恋人と過ごした)当たり前の日常は、未来には失われているかもしれないというメッセージに聞こえてきそうだ。

普段生活を送っていると、

今という何気ない時間が、この先もずっと続くものだと思いがちだ。

しかし、未来から眺めると、今という時間は宝石のようにかけがえのないものかもしれないと、考えさせられる。

この小説は、「今と過去」とが対比されているというのは、この通りだが、もう一つ、今と過去に重ね合わせるように「生と死」が対比されている。

「今と過去」とが交互に描かれているが、

それは、「生と死」の時間が交互に描かれていることでもある。

ここにも、普段は疑いようもなく生きているが、それが永遠にずっと続くわけではないのだという生の儚さが描かれているように感じた。

主人公とその祖父との対話のなかで、愛する人を失ったことをどう考えるかが描かれている。もし愛する人を残して自分が先に亡くなったら相手はどう思って生きていくのか、辛いことも自分の将来の糧になっているといった対話がなされる。

仮に自分事だったとしても、混乱して考えられないし、どんな意味づけをしても納得がいかないだろうと思った。

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